「あがり症でうまく話せず、社内のプレゼンが苦痛」
「お客様の前であがってしまい、頭が真っ白になるのが怖い」
あがり症のあなたは、緊張して思ったような振る舞いができずに悩んでしまった経験を多く抱えているのではないでしょうか。
あがり症を克服するには、原因を理解したうえで正しい改善方法を実践することが大切です。どんな対策方法があるのかを知ることで、漠然とした悩みから解放されましょう。
本記事では、あがり症に見られる症状や原因を解説したうえで、克服するための対処法をお届けします。
あがり症とは?
あがり症とは、大勢の前でのプレゼンテーションや人前で話す際に、不安や緊張が増大し、心身に症状が出ることです。社交不安障害や緊張症とも呼ばれています。
あがり症は特別なものではなく、人間が緊張したときに見られる自然な反応です。ただし、症状が慢性化してしまうと「人と目が合う」「会話する」というシチュエーションでもあがってしまう状態になります。
日常生活に支障が出るほど症状が重い方は、専門機関での治療も検討しましょう。
あがり症が起こるメカニズム
あがり症で引き起こされる症状は、血中ノルアドレナリン値が上昇することで起こります。
ノルアドレナリンとは神経伝達物質の一つで、緊張や不安を感じると活発に分泌されるものです。ノルアドレナリンが分泌されると交感神経が活発になり、心拍数や体温、血圧の上昇などを引き起こします。
結果として動悸や発汗、震えなどの身体的な症状につながってしまうのです。あがり症の人は交感神経が活発な場合が多く、通常よりも強い反応を示す傾向があります。そのため、極度に緊張したり恐怖を感じたりしやすくなるのです。
あがり症の主な症状
あがり症の最も代表的な症状は、声や手の震えがあります。また、緊張によって心臓がバクバクする動悸などもあるでしょう。このような症状がきっかけで、さらに緊張が強くなってしまう人も少なくありません。
加えて、あがり症には以下のような症状も見られます。
赤面症
恥ずかしいときに顔が赤くなる症状。顔だけでなく、耳や頬など特定の場所が赤くなるケースもある。
視線恐怖症
人の目を見ることに恐怖を感じる。また、人から見られることにも敏感で、恐怖や不安を感じやすい。
書痙(しょけい)
人前で文字を書くときに手が震えてしまう症状。必ずしも大勢の前とは限らず、窓口などの一対一の場面でも起こることがある。
電話恐怖症
電話の声を周りに聞かれていることに恐怖を感じて、うまく話せなくなってしまう症状。そもそも電話がかかってくることに恐怖を感じて、受けることができないケースもある。
会食恐怖症
人と食事することに恐怖を感じてしまう症状。食事中に会話することに対しても恐怖心がある。
吃音症(きつおんしょう)
人前で話す際にどもってしまう症状。特に一言目が出にくい傾向にある。
多汗症
人前に出ると顔、わき、手などから異常に汗をかいてしまう症状。交感神経が優位になることで、汗腺が活発になることが原因とされている。
パニック症
極度の緊張で頭が真っ白になってしまう症状。
呼吸困難
緊張によって息がうまくできなくなってしまう症状。
あがり症の症状は人によってさまざまです。「同じ経験は2度としたくない」とトラウマになっている方も少なくないでしょう。あがり症であること自体が、さらに症状を強めてしまうのが厄介なポイントです。
あがり症になりやすい人の特徴
「どんな性格の人があがり症になりやすいのか?」という疑問を解消するために、ここではあがり症になりやすい人の特徴を見ていきましょう。
- 人からの評価を気にする
- 完璧主義
- ネガティブ思考
人からの評価を気にする
「人にどう見られているか」や「悪く思われていないだろうか」など、他人の評価を気にしやすい人は、あがり症になりやすいです。
完璧主義
なんでも完璧を目指してしまう人は、あがり症に多いです。完璧を求めすぎるあまり、小さなミスが気になってしまいます。その結果、大きなミスにつながってしまうこともあるでしょう。
ネガティブ思考
あがり症には、ネガティブに捉えてしまいやすい人も多いです。「自分が悪い」「自分はできない人間だ」「自分にうまく話すことなどできない」と、知らないうちに自己暗示をかけてしまい、あがり症がより強くなってしまう。
人によっては「人からの評価を気にする完璧主義のネガティブ思考」と、すべての要素を持っている方もいるでしょう。
あがり症を克服するには、このような価値観を捨てて正しいトレーニングを積むことが大切です。
あがり症になる3つの原因
あがり症になる主な原因は以下の通りです。
- 過去のトラウマ
- 極度のプレッシャーを感じる環境
- 自己評価の低さ
過去のトラウマ
過去に経験したトラウマが原因で、あがり症になることがあります。
- 人前で緊張して顔が赤くなり恥ずかしかった
- 発表中に汗が止まらなくなり困った
- プレゼン中のミスを面識のない人に笑われた
過去にあがり症を経験した際のトラウマが忘れられないで残っていると、再びあがり症を引き起こす原因となってしまいます。
心に何かしらネガティブな要素が残っていると、同じようなシチュエーションになったときにフラッシュバックが起こってしまうのです。その結果、恐怖心からあがってしまいます。とても辛い思いをしていた場合、あがるだけでなく心の痛みから涙が出てしまう場合もあるでしょう。
単純にあがるというだけではないため、トラウマを俯瞰的に見られるようになる必要があります。短期的な解決策を試すのではなく、中長期的な対策を行うことが大切です。
極度のプレッシャーを感じる環境
極度のプレッシャーやストレスを感じる環境では、特にあがりやすくなります。
- 上司や同僚からの高い期待
- ライバルとの競争
- 失敗への恐れ
例えば、上記のようなシチュエーションは、強いプレッシャーがかかりやすいです。
予想以上にプレッシャーを感じてしまうと、あがり症の症状が見られるようになります。これは本人の物事の捉え方が大きく関係するため、周りから見ると緊張するような場面でないことも珍しくありません。
また、日々蓄積していたストレスとプレッシャーが組み合わさって、あがり症になってしまうケースもあるようです。
自己評価の低さ
自分に自信が持てない人や、自分の価値を必要以上に低く見積もってしまう人は、あがり症になりやすいです。
そもそもの評価が低いため、他者と比較しても有利になることはありません。その結果、落ち込んでしまう原因となり「自分には何もできない」といったスパイラルに陥ってしまいます。誰に何を言われたわけではないものの、自分自身で良からぬ方へ向かってしまうのが厄介です。
あがり症克服の5ステップ:効果的な治し方と対策
あがり症と自覚しているにもかかわらず、人前でプレゼンやスピーチを行わなければならないこともあるでしょう。
そんなときは、以下5つのステップを実践してみてください。
- 緊張は人として自然な反応であると理解する
- 本番に近い環境で練習する
- 筋弛緩法を活用する
- 本番前は深呼吸でリラックスする
- 本番は話す内容に集中する
ステップ①緊張は人として自然な反応であると理解する
まず「緊張=悪いこと」という間違った解釈を改めましょう。
緊張は人間が危機を察知するために身につけてきたものです。慣れない環境や知らない人を見たときに体がこわばるのは、とても自然な反応であることを理解しましょう。
そのうえで「人前で話す」ということについて考えてみてください。きっとあなたは今まで人前で話す経験をたくさんしてきたわけではないはずです。だからこそ、慣れない環境に緊張してあがり症の原因になっているのではないでしょうか。
つまり、人前で話す際に緊張するのはとても自然なことなのです。
緊張するのが悪いことと捉えると、さらにあがる原因になります。「慣れない環境なんだから緊張して当たり前」と考えるようにしましょう。
ステップ②本番に近い環境で練習する
慣れない環境では緊張して当然ということが理解できたら、次に行うべきは練習です。
「場慣れ」という言葉がある通り、人間はどんなに緊張していた環境でも慣れていきます。そのため「人前で話す」という特定の状況下であがり症を克服するには、本番に近い環境で練習するのが効果的です。
- 知人や家族の前でスピーチする
- 動画を撮って自分がどのように話すのか認識する
- 失敗したときの対処法や振る舞いを考える
- 音読してスピーチの内容を暗記する
- 緊張する場に出向いて緊張自体に慣れる
上記のような練習方法を実践すると、人の視線に慣れたり、客観的に自分を分析できるようになります。
例えば、スピーチしている自分を動画に撮影してみると「あのとき、かんで顔が熱くなったから真っ赤になっただろうと思っていたけど、実際は表情に表れていなかった」といった気づきも得られます。
また、スピーチの内容を暗記できるくらい練習をしておけば、それ自体が自信となり緊張しにくくなるものです。失敗して対処しているシーンなども想像しながら練習を行うと、より本番に強くなれるでしょう。
ステップ③筋弛緩法を活用する
筋弛緩法(きんしかんほう)とは、筋肉を緊張させた後にリラックスさせることで、身体的な緊張を緩和させる方法です。
あがり症の方は、緊張から体の筋肉が固くなります。しかし、緊張のあまり体がこわばっていることに気づけないことも多いです。そんなときに筋弛緩法を実践すると、強制的に筋肉をリラックスさせられます。
スピーチやプレゼン前に筋弛緩法を実行して、筋肉のこりをほぐしておきましょう。
筋弛緩法は、以下の流れで行います。
①安静な場所をみつける
緊張を和らげるためには、まず、静かな場所でリラックスする時間を確保することが重要です。
②深呼吸をする
3回ほどゆっくり深呼吸をしながら体をリラックスさせていきます。
③手の筋弛緩
両手を固く握りしめ、5秒間状態をキープします。
その後、手をゆっくり広げて指先からリラックスさせていきましょう。
④腕の筋弛緩
両腕を前に伸ばし、腕に力を入れたまま5秒間状態をキープします。
その後、ゆっくりと腕を体の横に戻し、リラックスさせてください。
⑤肩の筋弛緩
肩を耳に近づけるように上げて5秒間状態をキープします。
その後、ゆっくりと肩を耳から遠ざけて元の位置に戻し、リラックスさせましょう。
⑥顔の筋弛緩
眉を持ち上げ、目を大きく開けて5秒間状態をキープします。
その後、顔の筋肉をリラックスさせましょう。
⑦足の筋弛緩
その後、つま先を上に向けて足首を強く曲げ、5秒間その状態をキープします。
ゆっくりと足を伸ばし、リラックスさせましょう
⑧深呼吸を繰り返す
最後に再びゆっくりと深呼吸を3回ほど繰り返します。
体に力を入れる際は、70〜80%ほどの力で行うのがおすすめです。
また、体に力を入れているときと、力を抜いたときの感覚の違いを認識すると、よりリラックスできます。
筋肉がほぐれれば、声の震えも最小限にできるはずです。本番前のルーティンとして活用すると、体だけでなく心もリラックスできるでしょう。
ステップ④本番前は深呼吸でリラックスする
本番前は深呼吸で心を落ち着かせていきましょう。
深呼吸は緊張を解放して集中力を高める効果があります。本番の直前に深呼吸を3〜5分ほど行うと、心拍数や血圧が安定して落ち着いた状態を作れるのです。
あがり症の方は呼吸が浅くなってしまいがちなので、深呼吸を取り入れることでたくさんのメリットがあります。深呼吸の際は腹式呼吸を意識して、たくさん息を吸い込むようにしましょう。
ステップ⑤本番は話す内容に集中する
本番では、緊張に意識を向けるのではなく、自分が話している内容に集中しましょう。
あがり症の方が陥りやすいのが、周囲からの視線や自身の緊張に意識を向けて、余計に緊張してしまうことです。練習してきたことを淡々と実行するイメージを持ち、とにかく話している内容に集中するようにしましょう。
本番中はしっかり呼吸しながら、ゆっくり話す意識も大切です。一息でたくさん話そうとすると、息が続かなくなって早口で話す原因になります。
酸素が脳に行き届かないと集中できなくなってしまうので、しっかり呼吸するようにしましょう。
まとめ
あがり症を克服するには、まず緊張することは悪いことではないという点を理解しましょう。そのうえで、場慣れするためにも練習を積み重ねることが大切です。
「あがり症を克服するために人前で話す練習がしたい」
「プロからアドバイスを受けてみたい」
その場合は、スピーチを学べるトーストマスターズをおすすめします。
トーストマスターズは、パブリックスピーキングとリーダーシップを学べる、国際的な非営利教育団体です。世界143カ国に35 万人以上の会員数を誇り、日本だけでも4,000人以上の会員が在籍しています。
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