良好な人間関係を築くために欠かせないコミュニケーション能力。
どんなに素晴らしいアイデアを持っていても、それを伝える能力がなければ、相手に理解してもらえません。コミュニケーション能力を向上させることができれば、相手との信頼関係を築き、円滑に話を進められるでしょう。
実際にできるビジネスパーソンほど、コミュニケーション能力が高いものです。相手の気持ちを尊重しつつこちらの意見を伝えるには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。
本記事では、コミュニケーション能力を構成する要素や苦手な人の原因、鍛え方などをお伝えします。
この記事の目次
コミュニケーション能力とは
コミュニケーション能力とは、情報共有や意思疎通がスムーズに行える能力のことです。
相手と意見や情報を円滑に交換するためのスキルであり、話す力だけでなく聴く力も含まれます。
自分の考えや感情を伝えたり、相手の意見を引き出したりすることで、相互理解を深めることが可能です。
コミュニケーションスキルが求められる理由
ビジネスシーンでコミュニケーションスキルが求められる理由は、社員や顧客との意思疎通を円滑に進めるためです。
営業担当であれば、顧客と信頼関係を構築したり、クレームへ適切に対応したりする際に役立ちます。人事担当であれば、面接やフィードバックの場で、適切な質問やアドバイスを提供し、社員のモチベーションや成長を促進できるでしょう。プロダクトマネージャーであれば、各メンバーの進捗状況を把握し、迅速な課題解決ができます。
コミュニケーション能力が低い場合、相手に誤解されてしまったり、ネガティブな印象を与える原因になりかねません。相手からの信頼を失い、ビジネスチャンスを逃してしまうリスクもあるでしょう。
適切にコミュニケーションが取れるよう鍛えることで、相手の気分を害さずに自分の意見や感情を伝えられるようになります。
コミュニケーション能力を高めるメリット
コミュニケーション能力を高めるメリットの例を3つ紹介します。
効果的な情報伝達ができる
コミュニケーション能力が向上すると、自分の意図やメッセージを明確に相手へ伝えられるようになります。相手に合った言葉遣いや表現を選択できれば、誤解を避けることができるでしょう。結果として業務上の指示や報告などを円滑に進められるようになります。
強固な人間関係が構築できる
コミュニケーション能力が高まると、他者との関係を築きやすくなるメリットがあります。プロジェクトメンバーとの一体感が生まれ、強い信頼や協力関係の構築が可能です。顧客であれば、人間関係を築くことで長期的なビジネスパートナーになってくれるでしょう。
魅力的なプレゼンテーションができる
コミュニケーション能力の向上は、魅力的なプレゼンテーションを行う際にも役立ちます。聴衆のニーズを的確に把握し、相手の興味や共感を得られるようになるからです。話し方だけでなく、表情や声のトーンなどにも配慮して、表現力の高いプレゼンテーションが可能になります。
コミュニケーションの手段は2種類ある
コミュニケーションの手段には「言語」と「非言語」の2種類があります。
言語
言語は、自分の考えや価値観などを言葉に変換し、相手に伝えるコミュニケーション方法です。意図したメッセージを正確に伝えることで、相互のミスマッチを防ぎます。話す力だけでなく、聴く力、文章の読み書きなども含まれるコミュニケーション手段です。
非言語
非言語は、表情、声のトーン、身振り手振りなど、言葉以外の手段を使って伝えるコミュニケーション方法です。ボディランゲージや表情を交えることで、言語では伝えきれない感情面を伝達できます。非言語を上手く活用すれば、人を惹きつける魅力的なコミュニケーションができるでしょう。
コミュニケーション能力を構成する4つの基本要素
コミュニケーション能力を構成する4つの基本要素について解説します。
- 言語:言葉で伝える力
- 言語:相手の話を聴く力
- 非言語:言葉以外で伝える力
- 非言語:相手の振る舞いから理解する力
言語:言葉で伝える力
自分の考えや意見を、言葉で伝えるために必要な要素です。言語能力は相手に対して、適切な表現、文法、語彙などを使いこなすことで向上します。ビジネスシーンであれば、丁寧な話し方だけでなく、相手が納得するようなロジカルな説明や説得力のあるアプローチが求められるでしょう。
伝える力を向上させるには、まず結論から話す習慣を身につけるのがおすすめです。要点を簡潔に伝えられるようになれば、コミュニケーションコストを削減できます。聴く側のストレスも軽減できるでしょう。
言語:相手の話を聴く力
相手の話を聴く力は、コミュニケーションをスムーズに進めるうえで欠かせません。相手の意図や感情を理解し、適切な回答を行うには聴く力が不可欠だからです。聴く力が向上すると、相手のニーズを引き出せるようになります。こちらが相手に興味を持っていると思ってもらう際の重要要素とも言えるでしょう。
聴く力が高い人は、会話の中で適切な質問を提供できます。相手の話を注意深く聞いて、的確な質問ができるようになれば、クレームの対処やミーティング時の生産性を向上させられるようになるでしょう。
非言語:言葉以外で伝える力
言葉では伝えきれない要素を伝える力です。表情、身振り手振り、声のトーンなどを活用することで、言葉では理解できない感情や気持ちの強さを伝えることができます。淡々と話が進むよりも、にこやかに話す方が聞いているほうも興味を持ちやすいです。プレゼンテーションの際も、ボディランゲージがある話者の方が話を聞いてもらいやすいでしょう。
適切な表現を使えるようになれば、場をコントロールしやすくなり、コミュニケーションがうまくいくのは間違いありません。話を聴く際は、体を相手に向けて目を見て頷くことで「この人は自分の話をよく聴いてくれているな」と信頼感を与えられるでしょう。
非言語:相手の振る舞いから理解する力
相手の振舞いから本心を理解する力も、コミュニケーション能力の要素のひとつです。相手が話しをしながら時計を気にしている場合、後ろに何か予定があるのかと察することが出来ますよね。「この後予定があるんですか?それでは急いで話を進めましょう!」などと声をかけることで、相手の気持ちに寄り添うことも可能です。
相手の振る舞いから理解する能力を身につけるためには、相手に興味を持つことが重要です。声のトーンが普段と違ったり、表情にネガティブな感情が見てとれた際は、質問を投げかけてフォローアップしてあげましょう。双方の絆を強められるメリットが得られます。
コミュニケーション能力が低い原因
コミュニケーション能力が低い人には、共通する原因があるものです。以下で、原因を把握していきましょう。
話を最後まで聴けていない
コミュニケーション能力が低い最大の原因とも言えるのが「相手の話を最後まで聴けていない」ことです。相手が話し終える前に「きっと〇〇について話しているんだろう」と予測し、自分の話を始めてしまう。この場合、相手が伝えたかった内容と乖離が生じてしまう原因になります。
話を理解してもらえなかった相手は、少なからずストレスを感じてしまうものです。「この人は自分の話を聴いてくれていない」や「自分の話に興味がないのかな?」とネガティブな感情を抱く原因にもなってしまうでしょう。
相手の伝えたかったことが理解できていない場合、仕事ではプロジェクトがスムーズに進まなくなったり、顧客の信頼を描いてしまう可能性もあります。コミュニケーションを円滑にするためには、聴く力が非常に重要ということです。
一方的に話をしている
コミュニケーション能力が低い原因として、一方的に話をしてしまっている人も少なくありません。相手からすると返答をするタイミングが分からずに困惑してしまいます。また、長時間、一方的に話してしまうと、内容がバラバラになってしまい、相手に理解してもらえない原因にもなるでしょう。
会話のキャッチボールで言えば、一方的にボールを投げ続けている状態です。相手から返答があっても、自分の話を始めてしまうため、不快感や信頼感を失う可能性があります。相手と会話が弾まなければ、よい商談やミーティングができることもありません。
コミュニケーション能力を向上させるには、相手ありきで会話をする必要があるのです。
リアクションが薄い・鈍い
コミュニケーション能力が低い人の中には、リアクションが薄かったり鈍かったりするなどの原因もあります。例えば、相手が好意的にプロジェクトの進捗状況を話してくれた際に、そっけない表情で「へぇ」や「はぁ」などと返答したとしたら、相手は嫌悪感を抱いてしまうものです。その結果、相手によっては「この人には正直に話すのをやめよう」と思われてしまうかもしれません。
新規の見込み客と商談を行う際は、表情や声のトーンで相手から抱かれる印象が大きく変わります。人事部であれば、適切なリアクションができることで、社員からの信頼を得られるようになるでしょう。
コミュニケーション時のリアクションは、相手に与える印象を左右する重要な要素と言えます。
コミュニケーション能力が高い人に共通する特徴
コミュニケーション能力が高い人には、共通する特徴があります。
ここでは、コミュニケーション能力が高い人の共通点を見ていきましょう。
相手を起点に話をする
コミュニケーション能力が高い人は、相手を起点に話をする特徴があります。近況を尋ねたり、自分の身の回りで起きた話をしつつ、相手から会話を引き出していくイメージです。相手の話を聴き終えた後は、会話の中から生まれた新たな疑問や要点を声に出して、次のボールを相手に投げかけます。
コミュニケーション能力が高い人の場合、自分が話す割合を5割以上にしないのも特徴です。相手が話す割合を5〜6割程度にして会話をすると、円滑にコミュニケーションが取れるでしょう。
相手の話を否定しない
コミュニケーション能力が高い人は、相手の話を否定せずに会話をする特徴があります。「でも」や「それはそうだけど」などの否定的な接続詞を多用すると、相手は自分の正直な気持ちを伝えることに疲れてしまうのです。コミュニケーション能力が高い人の場合、肯定的な返事をしたうえで、意見を擦り合わせていきます。相手は自分を認めてくれていると感じられるため、よりポジティブな姿勢で話を進められるようになるでしょう。
大事な商談の際、どうしても譲れない条件もあるはずです。この際は、はじめから相手が提示した条件を否定するのではなく「相手がその条件を望む理由」を声に出したうえで、こちらの条件を伝えるのも有効策になります。「確かに単価〇〇円が理想的ですよね。当社としてもそのように対応させていただきたいのですが…」と続けることで、相手の気持ちを理解していると伝えられるでしょう。
傾聴スキルに長けている
コミュニケーション能力が高い人は、傾聴スキルに長けている特徴もあります。相手の話を注意深く聴き、話を遮ったりすることがありません。話を聴いている最中は、適度に相槌を打ち、会話の途中で短く要点を伝えるのも特徴です。「なるほど、〇〇ということですね」といったように簡潔に要点を話すことで「この人は自分の話をよく聴いてくれている」と思ってもらえるでしょう。
傾聴スキルが高い人は、非言語的なサインにも気づきやすいです。相手の表情や身振り手振り、声のトーンなどから感情や意図を汲み取り、より深い理解を目指します。相手が抱えている課題に対して共感し、繋がりを深めることもできるでしょう。
明確な質問やフィードバックを行う際も、傾聴スキルが大きく役立ちます。
コミュニケーション能力を鍛える3つの方法:仕事でも使える
コミュニケーション能力を高めて、できるビジネスパーソンになるには、どのような方法があるのでしょうか。最後にコミュニケーション能力を向上させる3つの方法を見ていきましょう。すぐに実践できるものばかりなので、ぜひ試してみてください。
相手の話をよく聴く
コミュニケーションを円滑に進める第一歩は、相手の話をよく聴くことです。聴く力を鍛えることで、理解力の向上や信頼感の獲得などに役立ちます。相手の話に集中するコツは「頭を空の状態に保つこと」です。「この人はきっと〇〇について話しているのだろう」と理解したつもりになってしまうと、コミュニケーションが上手くいかない原因になってしまいます。
しっかりと相手の話に耳を傾けて、相槌をしたり深く納得した際は、アイコンタクトを取るなどのジェスチャーを加えることも大切です。重要な内容が出た際は、相手の言葉を繰り返して理解している点を伝えてみてください。
相手の話をよく聴くことで、コミュニケーション能力が鍛えられるだけでなく、理解不足による仕事のミスも最小限にできるでしょう。
好意的なリアクションを取る
好意的なリアクションを取ることで、相手からよい印象を抱いてもらいやすくなります。円滑なコミュニケーションを行う際は、まず相手の不快感や不信感を取り除くことが重要です。明るい表情で話を聴く人と、無表情で聴く人とでは、相手が抱く印象が大きく変わるでしょう。
相手が楽しそうに話している時は、自分も笑顔で明るい対応をする。逆に相手が深刻なトーンで話している際は、こちらのトーンも抑えることで共感している気持ちを伝えやすくなります。真剣な話をしている相手には、目線を合わせて頷くことで、真剣に話を聴いていることをアピールできます。
ただしリアクションにばかり意識を向けると、わざとらしい印象を与えかねません。相手によっても最適なレベルが異なるので、様子を伺いながら適切なリアクションを心がけていきましょう。
結論から話す癖をつける
会話をする際は、結論から話すようにしましょう。スムーズに話を組み立てるには「5W1H」のフレームワークを活用するのがおすすめです。
- When:いつ
- Where:どこで
- Who:誰が
- What:何を
- Why:なぜ
- How:どのように
上記のフレームワークに沿って話を組み立てる練習を行うと、円滑に話せるようになります。
<悪い例> 昨日は新しいプロジェクトについての会議がありました。各部署からメンバーが参加して、ディスカッションを行いました。具体的なアイデアや予算について話し合いが行われ、次のステップについては、引き続き検討することになりました。 |
悪い例では、時系列が曖昧になっており、結論が後回しになっていることが分かるでしょう。この場合、話を聴いている側からすると、疑問を抱く時間が長くなってしまいます。
<良い例> 昨日の会議では新規プロジェクトの件について議論した結果、引き続き検討することになりました。各部署からメンバーが集まり意見交換を行いましたが、具体的な次のステップは決まりませんでした。 |
良い例では、最も重要な会議の結論から伝えていることが分かります。話の流れがスムーズなため、その後に続くコミュニケーションコストも最小限にできるはずです。5W1Hと結論ファーストの癖をつけることで、対話だけでなくチャットやメールなどのテキストベースでも円滑なコミュニケーションが取れるようになるでしょう。
まとめ
コミュニケーション能力は、仕事を円滑に進めていくために重要な役割を果たしています。
手段は「言語」と「非言語」で、両者ともに「伝える力」と「理解する力」から構成されているのが特徴です。
コミュニケーションは、相手がいてこそ成立するもの。だからこそ、まずは相手の話をしっかり聴くことが大切です。話している内容だけでなく、相手の表情や声のトーンにも気を配りましょう。言語と非言語を理解することで、的確な返答を行えるようになります。
コミュニケーション能力を高めるには、相手を起点に会話をスタートさせたり、否定をしないことも大切です。会話をする際は、結論から先に伝えることも意識しましょう。簡潔で具体性のある会話ができれば、相手への負荷を最小限にしつつ深い会話ができるようになります。
筋力トレーニングと同じで、コミュニケーション能力を向上させるには練習が必要です。
しかし、意識的にコミュニケーションのトレーニングを行うのは難しいもの。近くに練習相手やお手本となる人がいない場合は、トーストマスターズを利用するのがおすすめです。トーストマスターズは、パブリックスピーキングとリーダーシップを学ぶための国際的な非営利団体になります。全世界143ヵ国で35万人以上、日本では4,000人以上の会員が集い、ワークショップなども開催しています。
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