世界大会コラム(全11回): 世界に挑む男が考える「3つのC」-世界へ挑む日本人ラスベガスへの道2

春季大会で優勝、ラスベガスへの道を手にした田村さん。 右は「新たなライバル」新橋トーストマスターズの宮脇さん(2nd place)、左は「昔からのライバル」東京トーストマスターズのRuskyle Howser氏。

“no disqualification” (失格者なし)
これは、世界に堂々と挑む田村さんが恐れる唯一の瞬間かもしれない。
それは田村さんだけではない、一昨年シンシナティで田村さんと同じ場にいた私たちにも言えることである。シンシナティのセミファイナルで起きた「overtime(時間オーバー)」。初歩的なミスであるように見えるが、実はクリアするのに最も難しい課題ではないだろうか。
マラソン選手が自分のベストな場所で時間をかけて練習する。
試合当日、どんなにパーフェクトなコンディションで挑んだとしても、急な気温の変化や慣れない道での体の違和感など、どんな場合でも競争の場には不測の事態がまとわりつく。
スピーチも同じである。ただ人前で話せばいい、というのなら別だが、同じコンテンツを話していても国や人が場所が変われば反応が変わる。時には予想外に長い驚嘆の反応が起きて中断せざるをえなかったり、あまりの無反応に記憶が飛んでしまうほどの圧力を感じたり・・・
Overtime- それは田村さんにとって一番の「敵」である。
そして、ラスベガスでそれに負ける姿を私たちも見たくはないのだ。
今、再び世界に挑むことが決まった男は何を考えているのだろうか?

「まずは、時間オーバーなくできたのでホッとしています。
結果発表のとき “no disqualification” って聞いたときは小さな達成感がありました。いま考えていることは ラスベガスのファイナルのステージに立つってどんな感覚なんだろう。夢が実現する瞬間ってどんな感じなんだろうって妄想しています。でもそれはもうすぐ近くまで来ていて全然不可能なことではないって思っています。 とにかくいまはファイナルのステージに立つことしか考えていません。
では、どうしたらファイナルのステージに立つことができるか?
これから1ヶ月くらいかけてその答えを見つけていきたいと思います。昨年のセミファイナルのスピーチは全部みたのですがもう一度見るつもりです。その見方をオーディエンス目線からジャッジ目線に変えて見ていきます。
オーディエンス目線で『絶対これはいい!』って思ったスピーチが入賞しないのはなぜか?
なぜあんなスピーチが1位なのか?
分析をすれば何かが見えてくるはず。成功する事業と同じで勝つためには「3C」を知ることが重要だと思います。
3Cとは— Customer (顧客)、Competitor (競合)、Company (自社の強み)
これをセミファイナルに置き換えてみると、
Customer(ジャッジ)、Competitor(他のスピーカーのスピーチ)、Company(自分のスピーチ)
さて、ラスベガスのセミファイナルまであと12週間あります。まずは最初の5週間この3つを洗い出したい。そして次の3週間で自分のスピーチコンテンツとデリバリーを作り直す。最後の4週間で週末は日本国内のいくつかのクラブで練習をさせてもらう。 こんなプランです。挑戦の12週間です。」

— 世界へ挑む男は冷静に、そして極めてロジカルに勝つための戦略を淡々と追いかけている。

ディストリクト76注釈:
この記録は、唯一の日本人セミファイナル入賞を果たした(2019年5月時点)田村直樹さんが国際大会出場を決めた2015年5月から8月までのドキュメンタリーとして、メンバーより寄稿いただいたものです。ディストリクト76としては、全国コンテストや国際大会の雰囲気を感じてもらうための資料として、転載しております。寄稿者や登場人物の感想や思いなど主観に関する表現については、あくまでそれぞれの主観であり、ディストリクト76のハウスオピニオンではないことを最初におことわりいたします。また、トーストマスターズの専門的表現が一部あります。主にトーストマスターズ会員や、トーストマスターズについて多少の知識があることを前提とした内容のため、全ての語句に説明書きはついていません。予めご了承くださいませ。なお、記事内のメンバーの所属クラブなどの情報は当時のものです。