2024年日本語スピーチコンテスト
優勝者インタビュー
2024年トーストマスターズの日本語スピーチコンテストで優勝した古谷博子さん。
本日は、山内理央さんがインタビュアーとして、古谷さんのスピーチ作成における考え方についてお話を伺いました。(以下敬称略)
最初に説得するべき聞き手は自分自身
山内:続いてテクニックについて、お話を伺えればと思います。スピーチの原稿を作成する時に、まず最初に何を行いますか?
古谷さん:何を話すのか、何を聞いてもらいたいのか、自分ならではのトピックを決めます。原稿に取り掛かる前に、その時の自分はどう思っていたのか、今の自分はどう思うのか決めるのが大事だと思います。スピーチ作りの中では、印象に残る場面は会話で表現するようにしています。会話は情景をイメージしてもらいやすいですし、笑いを取れるところ、共感を得れるところ、そしてメッセージやキーワード・キーフレーズが入っているところだとも思います。そのため、スピーチ内では、会話を大事に作ってもらいたいと思います。
山内:なるほど。私は聴衆が自分の話に興味ないのではないか、もっと特定のトピックに対して詳しいのではないかと思ってしまって、内容を作ってから消してしまうこともあるんです。
古谷:私も人の目を気にしてしまっていて、スピーチがブレにブレたのですが、最後は自分らしく行こうと思いました。今回は、自分の未来がまだ定まっていない中でスピーチに向き合うことになり、「こんな自分が何かを伝えられるのだろうか。やっぱり無理かも」と思うこともありました。そんな時に、私のスピーチの根源でもあるのですが、最初に説得するべき聞き手は自分自身、ということに立ち返ります。自分を説得できないものは他人を説得できるわけがない、と。そこから、自分の不安定さや迷いも嘘も隠さず、正直に表現することでもいいのかな、と考えるようになり他者の目を気にすることから一歩踏み出す勇気を持てました。
山内:とことん自分との関わりが作成の根本なんですね。自分自身に向き合って乗り越えるからこそ、その厚みある内容につながるんですね。
キーワードはスピーチの道標
山内:今回「相棒」というキーワードの使い方が絶妙だと思いました。キーワードの使い方についてどのような工夫がありますか?
古谷:キーワード・キーフレーズはスピーチ作りには大変重要です。キーワードはスピーチのテーマを象徴し、オーディエンスが話の内容を理解して、着いてくるための道標の役割を果たしていると思います。今回のスピーチに「相棒」を3回、「老眼鏡」を3回入れています。どちらもメガネで同じ物ではあるのですが、「相棒」という言葉を使う時には、自分がポジティブな気持ちを表現をしたい時に使い、「老眼鏡」は状況がネガティブな気持ちの時という風に使い分けることで、その時の気持ちを表現していました。言葉を変えるだけで、イメージがこんなに変わるというのを意識しました。
山内:原稿を作成する時に、数年間の長い想いが詰まっていると思います。それをどうやって、短時間のスピーチにまとめ上げているんですか?
古谷:要る内容、要らない内容を見極めて原稿にまとめるのは非常に大変なんです。今回のスピーチは自分の2年間の経験を詰め込んでいるのですが、その中でどこにフォーカスするかを考える時、自分への問いかけを行います。例えば自分の感情が一番動いたところや印象に残った場面、あとは、相手の表情を軸として評価していきます。作成過程で何度も見直して、やっぱり迷うこともあります。そういう時に、メンバーから論評でご意見をいただくことで、自分では気付けなかったことや、こだわりに気づくことができるんです。そこでいただく意見は本当に貴重です。
山内:自分にとことん向き合うということは大きな発見です。
トーストマスターズは人と関わり合い研鑽し合う場所
山内:自分との向き合い方に関連して、トーストマスターズの活動の中でご自身の変化などありますか?
古谷:最初は、英語を上手くなりたいと思っていたところで知り合いから紹介を受けました。その知り合いに「古谷さん、絶対トーストマスターズ向いてるよ」という言葉をいただき、当時は何が向いてるのか理解できるまで続けようと思い入会しました。活動を続けていく中で、自分と対話をする機会をもらいましたね。人の魅力もあります。馴れ合いにならず、人と関わり合い研鑽し合うこの集まりがトーストマスターズですよね。これがトーストマスターズであり、大阪界トーストマスターズクラブではこれで続けてこれました。
山内:現在英語クラブに所属されてますが、日本語のスピーチはどこで練習しているんですか?
古谷:コンテストの時とデモスピーチの時に日本語スピーチを行い、それ以外はないんです。
山内:よく英語スピーチをしていると、日本語でスピーチを作るのは難しいと聞きます。
古谷:前回の日本語コンテスト時のスピーチは、英語のスピーチを日本語にしました。ユーモアスピーチは関西弁を使いたかったので、日本語から作りました。今回のスピーチは英語でも考えたのですが、言葉がしっくりくるという点で日本語で行いました。
山内:なるほど〜。
少しでも成長したい方、話す力を磨きたい方は、ぜひ一歩踏み出してほしい
山内:ところで、トーストマスターズの活動は私生活やお仕事にどのような影響がありましたか?
古谷:もし入会してなかったら、人前で話す経験は皆無です。お葬式の時と結婚式の時だけです。そして、今の講師の仕事には就いていなかったと思います。講師の面接試験の時にデモ講義がありました。笑顔でアイコンタクトをとりながら授業できたのは、トーストマスターズでのトレーニングのおかげだと思います。
授業でも、渾身のギャグが総スベリした時に話続ける根性もつきました(笑)。
山内:何があってもつづける根性(笑)。
古谷:最初の授業が終わった時は、「コンテスト委員長」と言いそうになりました(笑)。
山内:あっという間のインタビューで名残惜しいのですが、最後にトーストマスターズに入会を検討している方と、既存メンバーそれぞれにメッセージをお願いします。
古谷:入会を考えている方には、少しでも自分が成長したい方、話す力を磨きたい方は一歩ぜひ踏み出してほしいですね。年齢は関係ないです!若い方でも、老眼鏡世代でも、遅すぎることは絶対にないです!一緒に成長したい仲間がいて、暖かく支え合う場なので、素敵な経験と出会いが待っていると思います!
トーストマスターズメンバーへのエールとして、ずっと続けていくことで、違う景色が見えてくると思います。もう諦めようかなと思うこともあるかと思いますが、必ずトンネルは終わります。そしてトンネルから抜けて綺麗な景色が続いた後に、またトンネルが来ます。そしてまた別の景色が見えてくると思います。必ず出口はあります。その次の景色のために続けていけたらと思います。
山内:なるほど、この言葉はとても理解できます。トーストマスターズ活動はもちろん、様々なことに当てはまりますね。
心に響くお話をたくさん伺えました。まだまだ聞きたいことはありますが、本日はこちらにて失礼します。ありがとうございました。
※大阪堺トーストマスターズクラブは、第2土曜日に活動しています。