スピーチ作りは自分の気持ちに向き合うこと、自分を大切にすること(前半)

2024年日本語スピーチコンテスト
優勝者インタビュー

2024年トーストマスターズの日本語スピーチコンテストで優勝した古谷博子さん。
本日は、山内理央さんがインタビュアーとして、古谷さんのスピーチ作成における考え方についてお話を伺いました。(以下敬称略)

(左から:古谷、山内)

人を感じながら話すのは、オフラインコンテストならではの醍醐味

山内:この度は改めて、おめでとうございます!!まずは優勝された時の感想を教えていただけますか?

古谷:どうもありがとうございます。素直にとても嬉しかったです。コロナ禍では2021年と2022年のオンラインコンテストに出場しました。今回の2024年大会は久しぶりの対面コンテストとなり、一味も二味も違う特別なものでした。これまでとは全く異なる新鮮な環境だったので、参加するだけでもとても感動しました。実を言うと、自分の名前が呼ばれて大きな会場の壇上に上がった時は、緊張であまり記憶には残っていないですね。

2024年日本語コンテストの様子_1

山内:なるほど。多くの方が対面とオンラインとの違いを感じているかと思います。スピーカーとして舞台で聴衆の反応を見ながらスピーチを行うのは、どのように違うものなのでしょうか?

古谷:そうですね、実際に人とアイコンタクトを行うということに大きな違いを感じました。オンラインの時はウェブカメラとアイコンタクトをとり、カメラの向こうに聴衆を想像しながら行っていました。今回は舞台から、左から右まで手前から奥までの聴衆とアイコンタクトを行うことを意識しました。人を感じながら話すのは、オフラインならではの醍醐味だというのが分かった気がします。

山内:広いステージで行うことにおいて、気づきや変更点などはありますか?

古谷:ディビジョンコンテストで大きな会場でそこで大きなステージに慣れる機会があったのは経験として助かりました。オンライン上では画面が限られている一方、舞台は大きく動く必要があります。例えば、舞台の使い方として、右から左に動くことで未来と過去の表現を見せたかったのですが、ステージでの自分の方向と観客は逆に映るということに気づきました。舞台の立ち位置については聴衆から見た時にどう映るかという表現に気をつけました。

2024年日本語コンテストの様子_2

原稿の内容は就職活動の結果次第で

山内:なかなか気付けない、大きなポイントですね。ありがとうございます。
スピーチの内容も本当に素晴らしかったのですが、このスピーチを作ろうと思った背景を教えていただけますか?

古谷:このスピーチ「相棒」のストーリーの元となる話は2022年の夏に始まり、2024年の春に完結しました。スピーチのテーマを決める時は、自分の関心のあることや、自分ならではの出来事がいいと思っています。当時、仕事への悩みから必然的にこのテーマになりました。エリアコンテストの出場時はまだ就職も決まっておらず、スピーチ原稿の内容も就職活動の結果次第で変わっていくと言う状況でした。そのため、その場その場で感じたことを書くということをしていました。エリアコンテストと全国大会ではエンディングが全く違うんです。

山内:エリアコンテストの時の内容はどんな感じだったんですか?

古谷:エリアコンテストの時は、内容が暗くなりがちだったので、ユーモアを入れて明るくしなきゃと考えました。スピーチでは、歌舞伎の舞台の花道にかけて人生の花道を歩いていくというまとめ方にしました。まるで、自分に対して話しているようでした。当時は、どんなことがあっても第2の人生を自分を奮い立たせるためのスピーチだったのかなと思います。

一番大切なのは、自分の気持ちに向き合うこと、自分を大切にすること

山内:スピーチ作りでは訴えたいことを明確にすることがゴールでしょうか?

古谷:皆さんもそうかもしれませんが、話のテーマを決めることから始めます。スピーチ作りにおいて、一番大切なのは、自分の気持ちに向き合うこと、自分を大切にすることだと思うんです。それを蔑ろにすると、最後のところでメッセージが必ずブレてきちゃいます。

山内:お話を聞いていると、スピーチ作りは、綺麗事ではなく自分と向き合うことというのを本当に感じます。

古谷:そうですね、自分がどこで成長したのか、どの地点でどん底まで落ちたのか、どこがきっかけで立ち上がれたのか、良いも悪いも自分が変わったところを掘り下げることが大切だと思います。心に封印しておきたい思い出の箱をもう一度開けて、じっくり対峙する。ゆっくりゆっくり時間をかけて、その時の心を思い出してスピーチにすること、それが聴衆の感動を呼ぶのではないかと思います。

山内:なるほど!その時の感情、心に向き合ったからこそ、聴衆の心を動かせるのですね。