リーダーシップは、企業など組織に所属し、社会生活を送っていくうえで重要なスキルです。
リーダーシップという言葉を聞くと「チームのメンバーを統率すること」といったイメージをもたれる方が多いと思われますが、それだけではありません。
この記事では、リーダーシップという言葉の意味や定義、その種類にはどのようなものがあるのかを解説していきます。
この記事の目次
リーダーシップとは?
リーダーシップとは、日本において一般に「指導力」「統率力」と訳されます。
定義にはさまざまなものがありますが、「ある目的や目標を達成するため、個人や組織を牽引する能力や行動」であるという考えが主流です。
リーダーシップを発揮する人というと、先天的にカリスマ性や統率力に長けている人とイメージしがちですが、近年は後天的に身につけられる能力という考え方が主流です。
リーダーシップの種類
一口に「リーダーシップ」といっても、複数の種類やスタイルがあります。
ここでは、ドイツの心理学者クルト・レヴィン、アメリカの著述家ダニエル・ゴールマンの2名が提唱したリーダーシップの種類やスタイルについてそれぞれ解説していきます。
【クルト・レヴィン提唱】3つのリーダーシップのスタイル
『社会心理学の父』と呼ばれたクルト・レヴィンは、アイオワ大学で行った実験(アイオワ研究)結果を元に、リーダーシップを集団に与える影響の観点から「専制型」「民主型」「放任型」の3種類に分類しました。
専制型
専制型リーダーシップとは、意思決定やメンバーの集団行動などすべてにリーダーが関与し、細かな部分に至るまで指示をおこなうスタイルです。
メンバーは指示に従うだけでよいので効率もよく、失敗できない重要なプロジェクトや、積極性の低いメンバーを統率するのに向いています。
ただ、すべての行動において指示をおこなうことで、メンバーが受動的になり自立心が育ちにくくなったり、不満をもったりする場合がある、といったデメリットがあります。
民主型
民主型リーダーシップとは、意思決定や集団行動などをすべてメンバーがおこない、リーダーはそれをサポートするというスタイルです。
作業方針や手順はメンバー同士で話し合って決定し、リーダーはその話し合いの場を設け、スムーズに意思決定できるよう、支援側に回ります。
話し合いにより決定していくことで、メンバー同士の信頼関係の構築、モチベーション向上などの効果があります。
しかし、作業計画やスケジュール管理もメンバーに一任されるため、短期での成果を求められる際には不向きです。
放任型
放任型リーダーシップとは、意思決定や集団行動などすべての判断をメンバーに委ね、リーダーは一切関与しないスタイルです。
個々が自由に行動できるため、能力の高い優れたメンバーが集まればよい結果を生むこともあるでしょう。
しかし、チームとしてのまとまりが弱くなりやすく、士気が下がったり、モチベーションや生産性が低下したりしやすいという難点があります。
【ダニエル・ゴールマン提唱】6つのリーダーシップのスタイル
「EQ:心の知能指数」の提唱者であるダニエル・ゴールマンは、リーダーシップを「ビジョン型」「コーチ型」「関係重視型」「民主型」「ペースセッター型」「強制型」の6つに分類しました。
ビジョン型
ビジョン型リーダーシップとは、組織として将来どのようになりたいか、理想的な将来像や共通のビジョンをメンバーに共有し、訴えかけるスタイルです。
リーダーは目標達成の方法を押し付けることはせず、メンバーたちに考えさせるため、リーダーは信頼を得られやすく、またメンバーは自立心や団結力も高まりやすいです。
コーチ型
コーチ型リーダーシップとは、リーダーがコーチとして個々のメンバーと1対1で向き合い、それぞれの個性や長所・短所などを把握し、組織の目標と合わせて、メンバーごとの目標達成もサポートしていくスタイルです。
リーダーがメンバーの特徴を把握できれば、もっとも適任のメンバーに各業務を任せ、効率を高められるのが特長です。ただし、メンバーのモチベーションが低い場合は効果が低くなります。
関係重視型
関係重視型リーダーシップとは、組織の目標やビジョンよりメンバーの感情や考え方、メンバー間の関係性などを重視するスタイルです。
個々の感情や考え方に重きを置くことで信頼関係を良好にし、気持ちよく働けるというメリットがあります。一方、各々の考え方に食い違いが生じたり、トラブル時の責任の所在が曖昧になったりしやすいなどの難点もあります。
民主型
民主型リーダーシップとは、メンバーに意見を求めつつ組織全体を動かしていくなかで、新しいアイデアを生み出し、団結力を高めていくスタイルです。
ただし、結果よりも過程を重視するスタイルのため、明確な目標を達成しなくてはならない場合には不向きです。各々が自由に意見を出すことで意見が割れ、議論が滞る場合もあります。
ペースセッター型
ペースセッター型リーダーシップとは、リーダー自身が「ペースメーカー」として、ハイレベルな目標を率先して達成し、手本を見せてメンバーを鼓舞するスタイルです。
手本となることでメンバーも動きが分かりやすく、成功イメージも伝わりやすいです。ただし、メンバーのレベルが低い、モチベーションが低い場合はあまり効果を発揮できない可能性があります。
強制型
強制型リーダーシップとは、リーダーが意思決定や行動をすべて決定・判断し、メンバーを強制的に服従させるスタイルです。
短期的に絶対達成しなくてはならない目標がある場合に最適で、リーダーは指示の理由や説明を必要以上におこなうことはせず、メンバーは疑問をもたず強制的に従うのみです。
クルト・レヴィン提唱の「専制型」と同様で、長期的に強制型を用いた場合のデメリットとしてメンバーが不満をもちやすい、自立心が育ちにくい、などが挙げられます。
リーダーシップに求められるスキル
リーダーシップを発揮するには、どのようなスキルをもつことが望ましいのか、求められる重要な能力をご紹介いたします。
目標設定能力
どの企業、組織においても、売上目標やプロジェクトの提出期限など、達成しなくてはならない目標や期限が設けられているはずです。
リーダーはその目標や期限達成のために、メンバーの能力や得意・不得意を考慮し、週単位や月単位ごとに実現可能な数値的目標を設定する能力も求められます。
また、短期的な目標のみならず、会社としてのビジョンや目標達成の先にある理想を示し、メンバーのモチベーションの面でもサポートしていくことも重要です。
決断力
リーダーシップを発揮するには、状況に応じた判断、想定外の事態やトラブルが発生した際の臨機応変な対応など、さまざまな場面で決断力が必要不可欠です。
リーダーが優柔不断だったり先送りにしたりするようでは、当然メンバーもどう行動すべきか戸惑ってしまいます。リーダーはつねに進むべき方向を示す存在である必要があります。
リーダーの決断力が優れていれば、メンバーも安心して指示に従うはずです。また、判断を誤った場合の対応策も用意しておくと、さらに優秀なリーダーとして支持されるでしょう。
コミュニケーション力
リーダーはメンバーとヒアリングすることで個々の特徴や得意不得意を把握し、ときにそれに合わせて仕事を振ることもあるため、コミュニケーション力も必要不可欠です。
リーダーは自分の考えを押し付けるのではなく、コミュニケーション力を駆使し、意見をすり合わせながら行動してもらうよう導くことで、メンバーもやる気を出し、リーダーを信頼するようになります。
行動力
リーダーシップを発揮する人は行動力が高く、率先してメンバーの前に立ち引っ張っていくイメージのある方も多いことでしょう。
リーダーはリスクを考慮する必要はあるものの、失敗を恐れ、熟考しすぎて行動に移せないようでは、なかなか成果を達成できません。
リスクがあっても万が一の場合の対策を用意しつつ、まず自分が実践して見せることで、自信のある姿がメンバーから信頼されるようになるはずです。
まとめ
リーダーとしての能力を最大限に発揮するには、自分の統率する組織やメンバー、達成すべき目標、といった状況にあわせて、最適なスタイルを選んで実践することです。
リーダーシップにはさまざまな能力が求められますが、優れたリーダーとしてメンバーを率いれば、業務効率や成果の達成率も高められることでしょう。
リーダーシップ能力を高めるには、業務経験や学習で知識を深め、コミュニケーション能力や意思決定力、セルフマネジメント能力を磨くよう心がけてください。