2015年論評コンテスト優勝者からのメッセージ

2015年秋季 日本語論評コンテスト優勝者

走った距離は裏切らない。
近江喜一郎
小田原トーストマスターズクラブ

 

私はトーストマスターズの傍らマラソンを趣味としていますが、市民マラソンにはこんな格言があります。『走った距離は裏切らない』そして『マラソンにまぐれはない』。練習量をこなさずに本番で結果は出せないし、練習で出来ないことは本番でも出来ない。という意味です。今回の論評コンテストについても、同じようなことが言えるのかもしれません。8月25日の最初のクラブコンテストからの軌跡を振り返ってみます。11月28日の決勝までのほぼ3か月の間に自分の出場を含めて12のコンテスト、30回以上のクラブ例会に参加し、合計50本ほどの論評練習を積み重ねてきました。その過程でいろいろなタイプのスピーチを聞き、様々な論評の形を学ぶことができました。メモを持たずに話すと恰好いいということも、あるコンテスタントからいただいたスタイルです。勿論コンテスト審査基準は暗唱できるほど読み込んでいます。(嘘です。)
 
本番が近付くにつれメモの取り方を工夫したり、コンテストで1番目を引き当てても慌てないように論評準備の時間をほとんど取らずにまとめる練習をしました。つまりテストスピーチが終わった時点で論評の骨子が出来上がっている状態を目指したのです。あえて論評原稿を書き起こすということもやってみました。もちろんコンテスト当日にはそんなことはできないのですが、分析助言すべき視点の検証や、表現技法の訓練になることを実感しました。これ、おすすめです。
 
7月8月にかけて『論評オンラインセミナー』のナビゲータを務めさせていただき、過去の入賞者と掛け合いながらお伝えしたのですが、みなさんお聞きになりましたか?実は自分が一番多くのことを学ばせていただいたようです。だって、私の軌跡はこのオンラインセミナーで語られたことをなぞっただけなのですから。(今でもD76 のサイトにアーカイブが視聴可能ですのでお試しください)
 
決勝は今回から8人のコンテストとなり厳しい戦いになることが予想されました。渡邊さんのテストスピーチは非常にシンプル、メッセージを絞り込んだデリバリーも見事なもの。聴衆を巻き込んだ大変レベルの高いスピーチでしたが、なんとか私らしい論評ができました。実はコンテストに出るのは5年ぶりだったのですが、本番の舞台では結構リラックスしていました。それはこの4年間ディストリクト役員を務めて舞台の上で話すことに慣れたということに加え、他の方々をリコグニションすることに励んだことが論評スキルアップにも繋がったのではないかと分析しています。コンテストに出たいのでディストリクト役員は嫌だという方もいますが、『急がばまわれ』ということわざを思い出してほしいですね。
 
最後になりましたが練習にご協力いただいた多くのクラブの皆様と、大会運営にあたられたスタッフの皆様のご努力に感謝したいと思います。コンテスタントとしてはほとんどストレスなく自分の論評に集中することができました。コンテストって本当にいいものですね。改めて、ありがとうございました。

2015年春季 英語論評スピーチコンテスト優勝者

I LOVE ALL OF YOU!
Tomohide Oshima
Yamanote TMC

 

 ディストクト76の皆さん、こんにちは、英語の論評コンテスト・チャンピオンの大嶋友秀です。今回は、学びと気づきの多いコンテストになりました。私はトーストマスターズ歴がかなり長い方で、今年で23年目になります。これまで何回もコンテストには出場していますが、今回はそのどれよりも特別な思いを抱いています。
 
 まず、これまで英語の論評コンテストに挑戦したことはありませんでした。初トライだったのです。どうしても、言葉が英語になると、外国での留学経験や滞在体験がない私にとっては大きなチャレンジでした。そのために、スピーカーの話をしっかりと理解できるかと思うと尻込みしてしまう自分がいました。それに立ち向かうことができたのは嬉しいことでした。
 
 それに、英語のスピーチコンテストなどに何回か出場していますが、優勝できたのは今回が初めてです。日本語では経験があるのですが、ディストリクトでの英語で優勝というのは私にとって、これまでのトーストマスターズクラブの活動でも一番嬉しい瞬間でした。
 
 今回のコンテストの前から、自分のクラブだけでなく他のクラブからも、論評についてのワークショップを依頼されていました。私は、それを機会に「そもそも論評とは何か?」という問いと向き合ってみたのです。人を励ます論評があると同時に、いまひとつ人のモチベーションをあげていない論評があることも経験していました。なぜ、そんな差が生じているのかを追求してみたかったのです。そのために、論評に関するワークショップの資料から、すべてのコミュニケーション・マニュアルを熟読しなおして、マニュアルのプロジェクト、特にその目標を読み込んでいきました。そんな作業を経て、私が提供した論評ワークショップのプログラムができて、幾つかのクラブで実践させていただきました。
 
 今回のコンテストは、一度あるクラブコンテストで2位入賞にも届かず、私のコンテストはそれで終わるはずでした。ただ、ふと考えたんです。
「ワークショップで伝えた内容を私は実践をしていかなくていいのか?」 
「WSで方法を提案したのに、クラブコンテストで負けましたでいいのか?」
 そう自問したのです。実は、周りの人にも、そのクラブで負けたら、今期のコンテストはやりませんと言っていました。私が代表したやまのてトーストマスターズクラブの予選のヘルパーも引き受けていたんです。しかし、一晩考えて、もう一度、挑戦しようと決めました。次の日に、私は、ヘルパーをすることをお断りして、クラブコンテストへの参加意思を表明しました。
 
 それからは、自分が考えてきたこと、ワークショップで皆さんに伝えた基本を忠実に守ることで、質の高い論評を求めてきました。その基本というのは、実はマニュアルに記載されている出発点なのです。TM マニュアル “Effective Evaluation”の導入部分の後、The Evaluator’s Roleでは、こう始まります。
 
 “Your purpose as an evaluator is to provide honest reaction in a constructive manner to the person’s efforts, using the evaluation guides provided.” 
 
「論評者の役割〜論評者としての役割は、人の努力したことに対して、建設的なマナーを持って、正直な自分の反応をつたえることである、ただし、その時に論評ガイドにそって行うことを忘れずにしたい」(意訳:大嶋)
 
 マニュアルの論評ガイドを使うこと、これが論評の秘密であり、そこをしっかりとやらないと論評はがっかりさせてしまうことに気づきました。私の中でやっと「そもそも論評とは何か?」という問いの答えに近づけると確信しました。私が論評をするときに、そのスピーチのタイプを規定してから、ポイントを挙げたのは、マニュアルの中のスピーチと論評の関係を考えた結果でした。そのことにより、自分の視座がしっかりと定まり、スピーチを分析して、論評をすることができるからです。いつだって、人の判断は相対的です。何かと比べて判断をします。自分の経験も大きな基準ですが、それだけでは足りないと、マニュアルに書かれています。私は、それを読み込み、その基準をまとめ、自分の経験と合わせて、二つの基準を持って論評にあたることができたのです。
 
 私自身が、それがどれだけできたかはわかりません。未消化部分があるのは自分で認識しています。結果はありがたいものでした。しかし、コンテストの結果は時の運です。ファイナリストになっている力量がある人たちが集まっているのですから、もう1ラウンドやれば、結果は変わると思います。さらにもう1ラウンドやれば、また結果が変わるでしょう。ただ、今回の本番で、優勝することができたのは、素直に嬉しいですし、何よりも誇らしく感じています。
 
 最後になりますが、今回の素晴らしい大会やコンテストを実施・運営された皆さん、ありがとうございました。応援してくださった人、ワークショップの機会を与えてくださったクラブ、当日、その場で観客となった皆さん、テストスピーカーだった久松さん、そして、日本中のトーストマスッターズクラブの皆々様、本当にありがとうございました! I LOVE ALL OF YOU!