世界大会コラム(全11回): 「チャンピオンになる技術」とは何か 世界へ挑む日本人ラスベガスへの道 8

初の国際大会で東海クラブのメンバーたちと。2011年ラスベガスセミファイナル直後の写真

前々回のブログで「田村直樹が万年2位だった時代」を教えてくださったSusie さん(柴田 登子さん)。
Susieさんは言う— 「田村さんの話し方が変わった」と周りも気がついたのは2010年の秋頃からでした。
それから半年後、彼は全国大会でチャンピオンになったのです。
「個人の力だけではダメだとわかり、クラブのサポートを受け入れた」ことが大きく成長する原動力にもなったのでしょう。
あそこまで伸びた人を、私は知りません。

「話すことで世界品質を出せる唯一無二の日本人スピーカー」です。
でも、昔の田村さんは決してそうではなかったのです。
だから、私は言いたいのです。
「田村さんは、努力によって作られたチャンピオンなのです。」

「チャンピオンになる技術」を身につけるために田村が重ねてきた「努力」とはどのようなプロセスだったのだろうか?
その答えは、彼の「金太郎飴のように、どこを切ってもポジティブでシンプルな思考」に隠されている。

2013年、シンシナティ国際大会での「ファイナルチャンピオンシップ」決勝大会が始まる前
会場内は、「勝者を見ようと」これだけの行列ができる。

田村直樹にとって、トーストマスターズは
いつからか「カイゼン(改善)をしに来る」場所となっていた。
相手からのフィードバックを受け入れ、カイゼンする。
それを繰り返す。
また、相手からのフィードバックを受け入れてカイゼンする。
それをまた繰り返す。
再び、厳しいフィードバックを受ける。
そしてまたカイゼンに向けて努力する。
なぜ繰り返す必要があるのか?理由はひとつ、出来ていないからである。
自分が出来ていないのは、他のメンバーにとってもよくないことだからである。
今度もまた、今すぐ治らないようなフィードバックを受ける。
それを再び受け止め、カイゼンするためにひたすら進む。
なぜまだ繰り返す必要があるのか?理由は治るまでに時間がかかるからである。
またフィードバックが返ってくる。
それを丸ごと受け入れ、カイゼンへのパワーに変えてまたトライする。
その「シンプルな努力の繰り返しと積み重ね」「目的から外れる行動を好まない」という「ブレない意思と粘り強さ」が
チャンピオンスピーカーとしての田村直樹を作り上げたのである。

Susieさんは「田村直樹さんは、話すことで世界品質を出せる唯一無二の日本人スピーカー」
とお話をされていたが、それはいったいどのような技術なのだろうか?
そこに「世界へ挑む日本人」特有の強さがあるのでは?と思いそのまま田村さんにその質問を投げかけてみた。

2013年春の春季大会でシンシナティ国際大会行きを決めた田村さんと東海クラブのメンバー。
田村さんはすでに東京に移っていたが、この年の全国大会が名古屋で行われたため、2011年の優勝を決めた時と同じような熱気が写真から伝わってくる。

「そう仰って頂けるのは光栄です。
恐らく、世界大会に出場する90数名のセミファイナリストのなかでは、ぼくの英語はダントツで最下位です。
英語そのもので勝負できない分、他の領域でカバーしなければ絶対に勝てません。
小学生のころから授業のなかでShow & Tell でプレゼンテーションに慣れている欧米人にデリバリーのダイナミックさでも絶対に勝てない。
まともに正面衝突したら絶対に勝てない世界のライバルと互角以上の戦いをしてきた日本の企業、日本のチーム、日本人はどうやって世界一に登り詰めたのか? トヨタが車づくりで世界一になったのも、なでしこジャパンが世界一になったことも、イチローが世界トッププレーヤーになったことも、すべてこの言葉で説明できるのです。
それは、『世界一の技術を研究し、日本人の繊細さを織り込み、これまでにないものを創出する』ということです。
トヨタが最初につくった車はフォードを輸入して、何百という部品に解体して、それをまた組み立て直すというプロセスを何度も繰り返して車の設計を徹底的に研究したところからスタートし、
そこから日本人の緻密さと繊細さと忍耐強さが加わることで世界一の自動車メーカーになりました。
なでしこジャパンは、佐々木監督がドイツとアメリカのサッカーを徹底的に研究した技術的な側面に、繊細と思いやりのモチベーションマネジメントによる日本人ならではチームビルディングが組み合わさって世界一の結果に結びつきました。
イチローは、メジャーリーガーのケン・グリフィー・Jr.に憧れて野球選手を目指し、グリフィーのスタイルを追求すると同時に、日本人ならでは のしなやかさと柔、そして道具を大切にする精神が重なり合い、唯一無二のベースボーラーになりました。
日本人として、国際スピーチというフィールドで世界に挑み勝つチャンスがあるのだとしたら、『世界一の技術を研究し、日本人の繊細さを織り込み、これまでにないものを創出する』という道しかないと思いますし、いま自分はその道から決して大きく外れてはいないと思います。」

ディストリクト76注釈:
この記録は、唯一の日本人セミファイナル入賞を果たした(2019年5月時点)田村直樹さんが国際大会出場を決めた2015年5月から8月までのドキュメンタリーとして、メンバーより寄稿いただいたものです。ディストリクト76としては、全国コンテストや国際大会の雰囲気を感じてもらうための資料として、転載しております。寄稿者や登場人物の感想や思いなど主観に関する表現については、あくまでそれぞれの主観であり、ディストリクト76のハウスオピニオンではないことを最初におことわりいたします。また、トーストマスターズの専門的表現が一部あります。主にトーストマスターズ会員や、トーストマスターズについて多少の知識があることを前提とした内容のため、全ての語句に説明書きはついていません。予めご了承くださいませ。なお、記事内のメンバーの所属クラブなどの情報は当時のものです。

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