世界大会コラム(全11回): 【応援ありがとう】日本の皆さんへ 世界へ挑む日本人ラスベガスへの道11<最終回>

トーストマスターズ国際大会入賞盾
セミファイナルコンテストで入賞者だけがもらえるこの透明な盾はクリスタルでできている。
田村さんは、日本人として初めての「国際大会入賞者」となった。

ここはラスベガス。
カジノとエンターテイメント、人々の興奮と熱狂が飛び交う街。
ここで、ある一人の日本人が新たな歴史を生み出した。

田村 直樹
2015年トーストマスターズ国際大会セミファイナル 2位

11年前に初めて日本人が国際大会に出場するようになってから6人のスピーカーが挑戦してきたが、届かなかった「入賞」の壁。
田村さんは、見事にそれを突破した。

ここはラスベガス
参加人数、大会の規模も一昨年のシンシナティに比べてはるかに大きく、会場のドアを開けると、舞台の上のスピーカーと観客の「遠い距離感」。
後ろから見ていると、体の大きい欧米人も小さく見えて声が時々途切れ途切れになるスピーカーもいる。
年々確実に参加者が増加しているトーストマスターズ国際大会は、一昨年はそんなに見られなかったアフリカ・南アジアからのメンバーの参加も増え、間違いなく「世界のチャンピオンを生み出す競争の場」として成長を遂げているのがありありと伝わってきた。

3ラウンド、3つの場所・10人ずつの挑戦者に分かれて行われるセミファイナル。
田村さんは、夜7時30分から6番目のスピーカーだった。
今回田村さんが出演したセミファイナルブロックでは、一見特にインパクトのあるスピーカーは少ないように見えたが全体的に非常にレベルが高い。
日常生活のちょっとしたエピソード、黒人社会、社会での出来事
スピーチをしている間のちょっとした仕草、ジェスチャー、ユーモア
彼らが目に見えているものは明らかに日本人と「世界が違う」。
それらを「細かく」「具体的に」「分析をしても」日本人が入り込めない感性が存在している。
観客も、このレベルになってくると「受け方が違う」。
スピーカーの一言につっこみを入れる「タイミングの返し方」、モチベーションの上がり方など、日本にいるだけでは絶対にわからない、見られない高度な感性とオーガナイズされたコンテスト―それが「トーストマスターズ国際大会セミファイナル」なのである。


田村さんのスピーチは、春の全国大会で聞いたものよりもかなり迫力のあるものとなっていた。
空振りをするときの描写、言葉と言葉の間の置き方、動き方、表情
このセミファイナルに向けて相当な練習をしてきたのはすぐにわかった。
私が持ってきたストップウォッチでは7:19:39。
よし、時間はクリアした。

しかし・・・ 告白しよう。
「残念ながら・・・今回、田村さんはファイナルには進めない」
田村さんがスピーチを続けている途中で、なぜだかわからないが私はそう思ったのである。

田村さんを応援する日本のメンバーたち

少なからず感じたことは
前の席から見ていて、シンシナティの時と比べると、スピーチをしている間の観衆の反応が読みにくかったこと (しかし実際後ろから見ていた人の話によると、すごく受けていたらしい)
また、ところどころで声が小さくなる箇所があったのだが、これが国際大会の中でどのようなジャッジを受けるのか、見ていて若干不安を感じる部分があったことがシンシナティの時とは違っていた。
それでも、最終的に田村さんは今回も「観客を巻き込み」 国際大会の中で強烈なインパクトを残したのである。

スピーチコンテストが終わった後のコメントで、田村さんは観客を笑いの渦に巻き込んだ。
これこそ「日本人離れした堂々たる迫力とユーモアのセンス」
多くの観客がNaoki Tamuraという名前を再確認した瞬間だろう。

今、ひとつの戦いが終わり田村直樹は、「世界へ挑む日本人として」また新たな挑戦の旅に出る。
今後、田村さんのライバルは国内外問わずますます増えていくだろう。
そんな中、今回応援してくださったすべての皆さんへ・・・下記、田村さんからのメッセージです。

世界って意外と簡単に取れるんだな、っていうことなんです。
でも、僕がそう思えるまで専念できたのは、今まで日本のトーストマスターズの底上げのために多くの努力とリーダーシップを発揮してくださった大先輩たちがいたからなんです。
この方たちなくして今のディストリクト76(日本支部)はない。
同時に、確実にディストリクト76のレベルが上がり、世界に近づいてきています。
全体の底上げがあって、スピーチの技術の共有と積み重ねが「ワールドチャンピオン」を生み出すのです。
その人だけの努力と実力だけが飛びぬけていても世界には勝てません、「全体の底上げができる環境を維持する」ことが最も大事なのです。

ラスベガス⇔東京で行われた「ライブ中継」でインタビューに答えている田村さん

これからも「世界のスピーチを見て」その感動を持ち帰って、クラブの財産としてメンバーと共有し切磋琢磨できる環境を作っていって欲しい。
そして、どんどんコンテストに参加して、競争しあって、後悔して、また参加して競争して後悔して・・・
それを積みかさねて、どんどんみんな強くなってほしい。
来年以降の大会も狙います。
色々な人に挑戦してほしい。
その「常に底上げ」できる環境を常に維持することが、僕たちが「世界と戦うために」もっとも必要なことなのです。

ディストリクト76注釈:
この記録は、唯一の日本人セミファイナル入賞を果たした(2019年5月時点)田村直樹さんが国際大会出場を決めた2015年5月から8月までのドキュメンタリーとして、メンバーより寄稿いただいたものです。ディストリクト76としては、全国コンテストや国際大会の雰囲気を感じてもらうための資料として、転載しております。寄稿者や登場人物の感想や思いなど主観に関する表現については、あくまでそれぞれの主観であり、ディストリクト76のハウスオピニオンではないことを最初におことわりいたします。また、トーストマスターズの専門的表現が一部あります。主にトーストマスターズ会員や、トーストマスターズについて多少の知識があることを前提とした内容のため、全ての語句に説明書きはついていません。予めご了承くださいませ。なお、記事内のメンバーの所属クラブなどの情報は当時のものです。