世界大会コラム(全11回): ストライクアウトの後に道は開けるー世界へ挑む日本人ラスベガスへの道1

朝の参宮橋周辺(2015年トーストマスターズ全国大会会場近くにて)

いよいよこの日がやってきた。
2015年5月17日、トーストマスターズ全国春季大会。
といっても、わからない人には何のことなのか全くわからないだろう。
ちなみに言っておくが「トーストを焼いて誰がマスターかを競う」大会ではない。
トーストマスターズ—長い間歴史があり、なおかつ世界中にメンバーがいる「パブリックスピーキング・リーダーシップスキル」の上達を目的とするアメリカの非営利団体の全国大会が春と秋に行われるのだが※1、春の大会は特別である。
なぜなら、ここからその年の「世界への挑戦者」が決まるのだ。
そして—- 再びあの男が世界に挑もうとしている。

2013年、シンシナティで行われたトーストマスターズ国際大会でセミファイナル※2に出場した田村 直樹さん。
「You Decide」のスピーチは、会場にいた多くの人の共感を得ながらも惜しくもタイムオーバーとなり、失格。
そして2年後、また世界の舞台を狙う姿勢が野生の動物のようにぎらぎらと田村さんの全身から伝わってくる。

2013年シンシナティ国際大会・決勝のあとの閉会式

2013年8月20日。
シンシナティに向かう同じ夜行便で、田村さんは偶然私の少し前に座っていたのだが
その時目にした光景を未だ忘れることができない。
私がトーストマスターズに所属するはるか前からパブリックスピーチの実力者として活躍している田村さん。
普段、あれだけ「声が大きくて豪快で、ふてぶてしくて物おじしない」その後ろ姿から緊張が伝わってくる・・・
その姿はまるで、背中をがくがく震わせるのを必死に抑えている少年のように。
そして田村さんは、誰かに「その姿を見られている」ことに気がついてはいない。

そこから滲み出る後ろ姿。
そのプレッシャーは正に「強者が普段、人には決して見せないためらいと弱さ」。
だからこそこの人は、本物の勝者になるだろうと確信した瞬間でもあった。

そして当日—
代々木で行われた全国大会で、やはり田村さんは再びwinnerとなった。
「Pinch Hitter (ピンチヒッター)」というスピーチの中で、代打で試合にでてストライクアウトになって長い間悩まされた苦悩がある日突然仕事でチャンスになってかえってきた、という内容のスピーチだが
正にそのままのサクセスストーリーとなって、田村さんは再びトーストマスターズ国際大会への道を手にした。
今年の舞台はラスベガス、どんな物語や興奮や波乱が待っているのだろうか?
是非、ファイナルステージに立っている田村さんを見てみたい・・・

ディストリクト76注釈:
この記録は、唯一の日本人セミファイナル入賞を果たした(2019年5月時点)田村直樹さんが国際大会出場を決めた2015年5月から8月までのドキュメンタリーとして、メンバーより寄稿いただいたものです。ディストリクト76としては、全国コンテストや国際大会の雰囲気を感じてもらうための資料として、転載しております。寄稿者や登場人物の感想や思いなど主観に関する表現については、あくまでそれぞれの主観であり、ディストリクト76のハウスオピニオンではないことを最初におことわりいたします。また、トーストマスターズの専門的表現が一部あります。主にトーストマスターズ会員や、トーストマスターズについて多少の知識があることを前提とした内容のため、全ての語句に説明書きはついていません。予めご了承くださいませ。なお、記事内のメンバーの所属クラブなどの情報は当時のものです。

※1: 2018-19年度より、春の大会のみとなった。
※2: セミファイナルで優勝すると、世界ベスト8となるファイナルへ進出することができる。